機械学習に意思決定論? ④

機械学習に意思決定論? ④

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前回③で例示したリクリェーショナル・プロパティーズ社の社長ピータ・ラーソン氏の課題への解決策は、見つかりましたでしょうか? 

 

様々な解決策が考えられると思いますが、このままでは解決策が見つからないと思う方もいらっしゃるでしょう。

今回は、前回紹介したDecision Tree分析(以下、DT分析)の意義についてご紹介します。

 

前回例示したケースは、教科書の4ページに渡り概要が述べられているものです。中には、場合ごとの収益見込み表などが含まれています。このケース内容の各要素をまとめ、1枚の樹状のグラフにまとめたものがDTです。今回のケースはわずかに4ページですが、実際の社会での問題には、分散された様々な文章や図表などを併せて数十ページから数百ページにものぼる資料が用意されているのが現実です。

このような分散された情報を基に問題の把握から解決策の検討を行うために会議が開かれたならば、多くの読者も経験したことがあると思いますが、発言する人ごとに異なる資料についての質疑・応答が行われ、ばらばらの議論で多くの時間を費やした結果、運が良ければ共通の問題点を共有することが可能でしょう。しかしこのような会議のプロセスが、多くの人的コストの無駄であり非生産的であることは異論のないところかと思います。

 

DT分析は、効率を追求する米国で生まれ学問的に体系化された理論です。無駄を省き、より効率的に会議を運営することがDT分析の意義であり、1970年代~80年代の米国企業でDT分析が大きく貢献ができることが実証されています。事前に問題の全体をDTにまとめることで、問題の明示化を行い、会議では全員が同じDTを見ながら議論できることで会議の効率化を図ることができたのです。特に不確実性を含む問題に対して、意思決定すべき点と不確実性の部分とを明確にし、経営戦略を抽出するために効果的な手法であると言えるでしょう。

 

ここでDT作成にあたり、何点かの注意事項を解説します。はじめに、誰のためのDTなのか?と言うことです。この教材は、2000年ごろまで経営学の大学院(MBA)の講義でよく使われておりました。院生諸氏が、このケースのDT作成を試みるのですが、よく発生する問題が2005年8月の「裁判の判決結果」をDT盛り込むかどうかの点です。盛り込む必要が無いと判断した院生の多くの主張は、ケースの中で判決の結果がその後の林野庁の公聴会や公聴会後の林野庁の判断に影響しないと書いてあったからだと言うものです。

 

はたして、このケースに書かれている判決の結果が影響しないという内容は、どこまで信憑性があるのでしょうか? そもそも誰の情報なのでしょうか? 結論から言えば、ラーソン氏が様々な情報に基づき、影響しないと判断しているわけですが、影響しないならばなぜ判決結果を気にしてケース作成者に伝えているのでしょうか? さらに、影響しないならば新オプションを提案する意味はあるのでしょうか?

 

これらの考察から、ラーソン氏は高い確率で判決結果が影響しないと思いたいが、実際はどうなるかわからないと思っていると判断できます。従って、DTを作成するに当たり、判決結果を盛り込んでおくことが肝要でしょう。それはこのDTが、ラーソン氏の意思決定のために作成されるべきものだからです。

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図1:Recreational Properties社の Decision Tree Analysis

 

第2点ですが、DTは意思決定者の過不足ない必要十分条件を満たしているものでなければならないということです。

このDTで一部の院生が主張する点ですが、判決結果は盛り込むことにしても、判決結果が「好ましくない」場合は、林野庁の貸してくれる可能性はゼロに近くなるのだから、その段階で「土地を購入しない」という判断で良いのではないか、という意見です。再度申し上げれば、これはラーソン氏の考えであり、ラーソン氏のためのDTであることから、ラーソン氏の考えていることを過不足なく含めて記載すべきです。

 

さて、このようにして作成されたDTに対して、読者の皆様はどのような判断を下すことが可能でしょうか? 問題をどのように捉え、論理的な解決方を見出すことができるでしょうか?

 

次回は、DTによる解決策について考察します。

 

 

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