IoT、AI そして シンギュラリティ (2)

IoT、AI そして シンギュラリティ (2)

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前回の「IoT、AIそしてシンギュラリティ(1)」では、これらのキーワードの相互関係の概要と、AIに関する各国の取り組みを紹介しました。今回は、AIの論理的な基盤となっているディープラーニング(深層学習)などを中心にAI研究の現状や、AIを活用したIoTの未来について解説します。

 

近年話題になっているGoogleの「アルファ碁」やIBMのWatsonなどに見られるように、多層型ニューラルネットワークに基づくディープラーニングによる知的なAIの研究が活発になっています。これらの研究では、以前のAIのように与えられたデータを基にパターン認識で判断する段階から、画像内容の質疑応答が可能な対話システムなど、データを自己学習して現実世界に反応を返すAIの実現へ重心が移っています。さらにこれらのディープラーニングの応用は、人間並みの知能という究極の目標に向かって、画像や音声の認識といった実世界を受動的に知覚する用途から、行動の判断や動作の制御といった実世界に対して能動的に働きかける用途に広がりつつあります。 図2-1

出典:日経テクノロジー 「進化する深層学習」

http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/mag/15/051300047/051600002/?SS=imgview&FD=-876466480

 

 

現在のディープラーニングは、多層型ニューラルネットワークが主力ですが、「PalmPilot」などの携帯機器を生み出しモバイルコンピューティングの世界を切り開き、現在は自ら創業したNumenta社で研究を進めているJeff Hawkins氏は、「これまでに、新皮質を構成する6つの層のうち第3層で何が起きているのかを正しく理解できたと考えている。その部分をソフトウエアに実装して製品に利用している。脳は神経細胞(ニューロン)からできていて、実際のニューロンは非常に複雑だ。何千ものシナプスや樹状突起があって、活発に情報処理をしている。現在、実用化が進んでいるニューラルネットワークは本物と比べて単純すぎる。我々が手掛けているのは、本物のニューロンの動作の解明だ。」(日経エレクトロニクス 2016年6月号)とインタビューに答えていました。

この他にも、AI技術や異なる性質のDNNと組みわせて動作するAIの研究や手法が次々に報告されていますが、学習や実行に膨大な計算能力が必要だったり、精度がまだ十分でなかったりするため、実用化には5~10年を要すると思われます。さらに進んで、学習によって論理的思考や類推といった機能を実現する高度な知的能力や、自らを作り変え自発的に学習するような人間に迫る知性が登場するのは、10~20年は先になると見込まれています。

 

これらの研究が実用化に繋がるニュースとして「音声アシスタントとチャット用のボットが今後5年で最も重要な一般消費者向けの人工知能(AI)機能になることが、AIと機械学習に特化した調査会社テックエマージェンスが22日に発表した調査結果で明らかになった。」と2016年6月30日付けの日経新聞で報告されました。この事例以外でも、ドイツで進められているスマート工場でのIoT(状況を学習・判断し最適な行動を取るロボットの動作やコンテンツの生成)や、自然言語による対話システムなどは10年以内にも実現すると考えられています。

 

一方IoTは、スマート工場などの特定域内に留まらず、家庭や社会へと浸透していくと想定されています。前出の「音声アシスタントとチャット用のボットのAI化」のように、車などの移動手段や道路や交通拠点、ビルや公共の施設、さらに家庭内では電気製品はもとよりセンサーなどが組み込まれた家具などのあらゆる所がIoTの対象となり、それぞれの製品を提供する企業のCRM活動に使われます。

また、CRMのスマート化と同時にSCMが統合され、企業を仲立ちとした原料から生産、販売、消費者が一連の情報チェーンで繋がり、AIによる消費者の製品利用状況などから逐次製品スペックの変更が行われた製品の市場提供のループが構築されることになります。さらにこの製品のIoT化から提供される情報は、想像もつかない波及効果を生み、新たな産業の創出に繋がる可能性を秘めています。

 

これらの考察から見えてくるのは、IoTが十分に浸透しAIによる管理が進めば進むほど、完全に個々の顧客ニーズに対応した商品やサービスを提供できる社会になりうることが想像できます。例えば、まるで夢のようなお話ですが、顧客側にとっては日常の生活をしているだけで必要なものを必要な時に必要なものだけ享受でき、企業側はAIにより管理された世界中のロボット化されたスマート工場で2つとして同じ製品やサービスを作らずに効率化できる社会に向かうと言えるのではないでしょうか。 図2-2

出典:IoT総合技術展 http://www.jasa.or.jp/expo/

 

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