機械学習に意思決定論? ①

機械学習に意思決定論? ①

近年、GoogleやMSなどを中心に、多層化されたニューラルネットワークによるディープラーニングを用いた機械学習の事例が数多く報告されています。
しかし単純な機械学習自体は、ROMチップに搭載された家電や自動車などに古くから活用されてきました。これらの工学・IT分野の機械学習とデータサイエンス分野で急成長してきたディープラーニングが結合され、近年のブームになっています。 

このディープラーニングを用いた機械学習の特徴は、人間が行ってきた分野にAIとして導入される可能性を秘めていることです。機械学習をAIとして活用する上で大きな要素は、これまで人間が行ってきた判断=意思決定の一部を行うことにあります。AIは、ディープライニングのプロセスを通して選択肢の可能性を検討しますが、それらの選択肢の選別プロセスや最終選択肢を選ぶためには意思決定のプロセスが有効になります。

この記事は、1980年代に最盛期を迎えた意思決定論のサーベィを通して、AIにおける意思決定論の役割をシリーズで報告します。今回は第1回目として、意思決定論の俯瞰を行います。意思決定理論の研究は、20世紀初頭から始まり第2次世界大戦中にOR(Operations Research)として脚光を浴びました。例えば、物資と人を効率良く戦場に運ぶためには、どのようにすべきなのか? ロケットを目的の場所に的中させるためには、どのような事を考え計算すればよいのだろうか? などの疑問に答えるために、LP(Linear Programing)やNetwork・PERTなどの決定問題に対する手法が開発されました。

しかし、これらのOR手法は、戦争が終わるとその役割が無くなり研究も中断されていましたが、1960年代に入り経営戦略の中心的な手法(経営科学:Management Science)として再生しました。もとより企業経営は、敵対する企業間の戦争のようなものであり、思考ロジックや施術がマッチした結果であることは自明です。この時代の研究の中心は、不確実性をどう扱うか?という問題でした。多くの決定理論は、数学的に精緻な証明に裏付けられた理論の構築により応用されてきましたが、不確実性が入るやいなや全てが証明不可能な領域となってしまうからです。

そこで編み出された考え方が、確率過程手法(Stochastic Process)とシミュレーションでした。確率過程論は、確率過程と期待値を用いて確定要素と同じ扱いが出来るという理論的背景によるもので、広くミクロ経済学の分野で適用されエコノメトリックス(計量経済学)と呼ばれる分野に成長しました。しかし、この確率過程理論の特徴は、期待値を用いることからも明らかですが、経済学のような大きな範囲に対する示唆としては有効ですが、1回しか起こらない経営上の判断に使うのは大変難しいと言えるでしょう。

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一方、メインフレーム全盛時代の1980年でのシミュレーション分析は、一部の大企業だけが行える手法であり、数学的な論理中心の学術体系の中では亜流とされてきました。しかし、実務・学術両面で、論理的な範囲では解決しない問題が多すぎる現状があり、ミドルウェアやPCの急激な発展に伴い、“大数の法則”に従ってシミュレーション分析の意義が認められ現在に至っています。 現在では、コンピュータベースのシミュレーションが主体となり、一部に決定論的な手法や確率・統計の理論が応用され時代となっています。データサイエンティストとしては、統計理論をベースとした様々なマーケティングサイエンス手法に長けているこが大切ですが、これらの理論の生まれてきた素地である決定理論を理解しておくことが肝要かと思います。

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