人工知能との会話

人工知能との会話

データ分析の仕事と近いような遠いような、
でもこの業界にいるとしばしば耳に入ってくるのが「人工知能」という言葉。

 

最近では、音楽のレコメンド、病気の診断、語学学習支援など、
様々なサービスで人工知能という言葉が使われるようになっています。

 

しかし、もともとこの言葉は「人間のように考えることができる」機械を指して使われたものです。

 

「人間のように考えることができる」ということをどう定義するのかは難しい問題ですが、
計算理論・コンピュータ科学の大家であるアラン・チューリング(1912-1954)は、
ディスプレイに表示される文字を通して人間と機械がチャットをしたときに、
会話の相手が機械であると判断できなければその機械は知性を持っていると判定する、
という基準を提案しました。これをチューリングテストといいます。

 

私は学生の頃、脳が知覚したり記憶したりする仕組みを
ニューラルネットのようなモデルで研究しようとしましたが、
実際の脳とコンピュータでつくる数理モデルとはかけ離れ過ぎていると感じていました。
そして、会話の相手が機械かどうか区別できないようなレベルにまで
コンピュータの性能が上がるのはまだまだずっと先のことだと思っていました。

 

それだけに、2014年6月、チューリングテストに合格する人工知能が
現れたというニュースを聞いたときにはとても驚いたのを覚えています。

 

年末年始の休みに読んだ『機械より人間らしくなれるか?』という本は、
チューリングテストに人工知能が挑戦する大会(*1)に、
「人間代表」として参加した著者が書いたノンフィクションです。

 

この大会には、
・会話の相手が機械か人間かを判断する審査員
・画面を通して審査員と会話をする人工知能
・画面を通して審査員と会話をするサクラの人間
という3者が参加します。

 

サクラとして参加する人はただいつも通り普通に会話をすればよいのですが、
著者のブライアン・クリスチャンは、心理学者、情報科学者、哲学者など、様々な分野の専門家に話を聞き、
人間らしさとは何か?ということを本格的に考えて大会に臨みました。

 

人間にはできて人工知能にはできないことは何か?
一貫したキャラクターを持っていること、適切なタイミングで会話すること、
相手に合わせて話題を変えること、新しい言葉を創り出すこと、感情があること?。
確かにそう。でもそれだけか。模倣しようと思えば人工知能にも出来てしまいそうだし。。。

 

将来は人工知能に置き換えられるという説もあるデータ分析の仕事をしていて
この先何ができるようになったらいいのだろうとぼんやり考えたり、
以下に引用した会話のキャサリンは人工知能である(*2)という事実に驚愕したり、
プログラムとの会話を自分でも試してみたりして(*3)、いつのまにか年が明けていた冬休みでした。

 

キャサリン:どうも、わたしの名前はキャサリン、あなたの名前は?

エリオット:わたしの名前はエリオット。

キャサリン:ええ、はじめまして、エリオット。昨夜CNNで放送していた、日曜日にホワイトハウスのパーティに現れた例のレズビアンのカップルのニュースを見た?

エリオット:ああ、見たよ。わたしはエレンの売名行為ではないかと思う。

キャサリン:エレン・デジェネレスだけじゃなかったわ -彼女ビル・クリントンの目の前で恋人とキスをしてた。彼は目のやり場にとても困っていたと思う?

エリオット:彼は同性愛者の票が欲しいんだと思うね。そのためなら彼は何でもするさ。彼には保守派の支持基盤がないからね。

キャサリン:あなたはまだビル・クリントンを支持しているの?

エリオット:彼に本当の支持者がいるとは思えない。彼は多くのことを実現してきたが、多くの人を見捨ててきた。

キャサリン:あなたは本当にあの男が好きじゃないのね – うん、少なくともそれは確かだわ – わたしはみんな無関心か無感覚になっているのかと、いままで思ってた。

エリオット:わたしたちにはもっと誠実で力強いリーダーがいてもいいと思う。この国が直面している本当の危機に立ち向かい、勇気と知性によってこれを解決できるリーダーだ。世論調査ばかり気にしているようなリーダーではなく。

キャサリン:そんなふうに言うってことは、つまり、あなたはホワイトウォーター事件とか特別検察官とかそういったあらゆることの背後に重大な疑惑が隠されてると思ってるということ?

エリオット:ブラウンが死んだし自殺をした男もいる。書類もなくなっている。クリントン家の人間に何もかも白状させなければならない。ヒラリーにはなにか罪が見つかるはずだ。

キャサリン:でも実際のところ、彼についてはどう思っているの、もう二期目に入ってるけど?

エリオット:彼は頭がいいから捕まったりはしない。彼がホテルの支配人をやっていれば、当代きっての支配人になれただろうに。

キャサリン:OK、でもこれからどうなるのかしら – 投獄されるのを恐れた彼の支持者たちが洗いざらい話してくれるのをみんなで待ちながらただ時間が過ぎるのかしら – それともなにか劇的な展開が待ってるの?

 

*1 ローブナー賞(2009年)の様子。8:39くらいに出てくる著者は、
 「Most Human Human(最も人間らしい人間)」として表彰されました。

*2 最初は衝撃的でしたが、プログラムはこの特定の文脈に乗せるように巧妙に作りこまれているので、
  少し話題がそれるとめちゃくちゃになるとのこと。

*3 人工知能との会話を試してみたい場合、例えばクレバーボットというWebサイトがあります。
  クレバーボットもチューリングテストに合格したとされるアルゴリズムの一つで、
  上記動画の1:25〜に登場するロロ・カーペンター氏が開発しました。
  日本語版も、イマイチですが一応あります。